時代の流れとともに、料亭というスタイルの店は減少してきている。貝塚の地にもかつては複数の料亭があったが、今では『料亭古の木』以外の店がなくなってしまったと二代目店主の利和さんは語る。「私は元々サラリーマンをしていて、昭和37年頃に職を辞して店を引き継ぎ始めました。そこからバブル崩壊までは活気のある時代で、増築を重ねて舞台付大広間も備えることもできましたが、いい時代は長く続きませんでした。貝塚周辺は過疎化が進み、ニーズもどんどん変化して、気付けば周辺で料亭はうちだけに。コロナ禍ではお客様が来ない時期が続き大変でしたが、父が守り続けていた味にこだわることで、お客様の心を繋ぎ止められたのかなと感じています」。『古の木』の魅力は手作りにこだわった料理が第一であるが、柔軟なサービスを提供していることも、広い客層の心を掴んでいる要因のはずだ。現在では利和さんの長男である和宏さんが主に店のマネージメントをしており、様々な試みを行っている。「昨今のニーズを考えると、ご年配の方や女性のお客様に喜んでいただけるサービスを考える必要があります。そのため座敷ではありますが、掘りごたつや椅子席にして、くつろぎやすいようにしています。また部屋の時間制限を設けず、お食い初めや還暦のお祝い、同窓会など様々な行事でご利用いただいています。お客様を限定せず、プライベートな空間でゆっくりお料理を楽しんでいただけるよう配慮することが、今の料亭に求められていることなのかもしれません」と和宏さんは語った。様々な挑戦を続ける同店だが、今年6月から店の向かいにカウンターメインの店『千利』を新しくオープンする。利和さんは最後にこう締めくくった。「料亭と名がついていると敷居の高さを感じてしまいますので、気軽にランチや一品を楽しんでいただけるスタイルの店を作り、そこをきっかけにお客様を開拓した方がいいと、次男が中心となって開店することになりました。貝塚にお越しの際は、ぜひそちらもご利用いただければと思います」。